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hirano関数@2014/4/3 12:11
スニペット「健康法」

こんにちは、関数です。

今回のスニペットは「健康法」です。

 

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「健康になれるなら死んだっていい」という金言がある。

 

理想の健康法を求めて長い年月に渡り研究を重ねた或る人物の、心からの述懐だと言う。即ち、この上なく不健康な考えである。したがって理想の健康法とは、健康法などを求めないことに尽きる、という全く平板で詰らない帰結になってしまう。

 

全くのところ、それでは面白くないなと貝原裕三は思った。健康なんぞということを気にし始めること自体が不健康の、或いは加齢の、証拠であるには違いない。それは承知した上でしかし、承知できないものが残る。貝原はあれこれ試してみることにした。

 

そして試すにも、気短なようでは意味が無い。「ダイエット」に戯画的に象徴されるような、ちょっと手を出してみてはすぐ飽きて次、という調子では何事にせよおぼつかないに決まっている。

 

そこへ行くと貝原は、その年齢に加え、持ち前の性格からして、腰を据えてかかる姿勢は保てるだろうと自ら恃むところがあった。時間をかけて取組むこと、少々度を外れているかと思えるまでに時間をかけること、それが、貝原がいつしか会得した処世術らしきものである。若い頃に、今の女房を三年と六ヶ月間かけて口説き落した男こそは貝原である。

 

残された人生の時間は短い。しかし、健康法をじっくり試すこともできないほどに短くはない。

 

どのように始めるべきか、と貝原は脳内を物色した。

 

雑誌やウェブを物色するのは迷いの元だと思ったのである。世間では健康法は、研究するものではなくて、売るものになっている。憧れの体型を「手に入れる」。女性としての輝きを「手に入れる」。売り買いの意識が露骨に出ているこうした言い方が、ごく自然に通っている時代である。

 

胡座してしばらく考えたところ、差当っての貝原の発想の大枠は、こんなことになった。

 

給餌・排泄・運動・休養・思索。人体のやることはこの五つに分けられそうだ。忘れられがちな第五の要素を抜かりなく加えてあるのが、貝原は我ながら少し気に入った。漢字ばかりで勿体ぶったようで可笑しいから、やまと言葉で、呑む・出す・動く・休む・考える、としたほうが素敵だろうか。

 

これらの少なくとも一つを改善することが、即ち健康を改善することだ。まずはそう決め付けてみる。ぜんぶ改善できれば良いには違いなかろうが、それこそはまさに気短な行き方になってしまう。欲張ってはいけない。

 

よって問題の焦点は、五つの要素のうち、いずれが最も深く健康状態に影響するものであるか、であろう。一つずつ、それを検証して行くことであろう。

 

貝原は《出す》から始めることにした。そうだな、短くとも半年間ほどは、《出す》ことにばかり留意して、我が身をよく点検するのだ。そこから健康の秘訣を探ってゆくのだ。

 

急に尿意を催して貝原はトイレに行った。

 

その後では、飼い猫の虎太郎が、庭に生えた青い草を喰って、それから何かしていた。

 

 

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この短い話はこれでおしまいですが、

しかし言語の鎖は連なる。

次回のスニペットは「迷い」でお送りします。

 

※記事中の画像はウィキメディアコモンズより転載