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hirano関数@2014/4/11 11:22
スニペット「背筋」

こんにちは、関数です。

今回のスニペットは「背筋」です。

 

****

 

ここ数日間、背筋がぞくぞくするのだと安西麗菜が言う。そこで私は応じた。

 

「霊が憑いたんじゃあないの」

 

「あら、そうね、それは気付かなかった。風邪ひいたのかしら、くらいに思っていたから」

 

私も私だが、麗菜も麗菜である。そして、そういうことは気軽に口にするものではない、と後から反省した。もし本当だったらどうするのだ。

 

心裡的なと言うのか民俗的なと言うのかオカルト的なと言うのか形而上的なと言うのか、そうした種類のことは、うっかり言葉にすると、それがその通り実現してしまうことがある。

 

本当だった。

 

それから二日過ぎても三日過ぎてもまだ、麗菜はぞくぞくしていた。四日目に、ついに確証をはっきり掴んだ。二週間ほど経って会ったとき、麗菜はそう話してくれた。

 

「確証って何」

 

「何って、だって。見えるし聞こえるし」

 

「幽霊って日本語通じるの?」

 

「そんな質問するところがあんたらしいのねえ。そう、言われてみれば、どうなんだろう。こちらから話し掛けたわけじゃあないの」

 

「だって、聞こえるんでしょう」

 

「ああそういうこと。レイナはただ、『あっ』とか『は』とか『きゃあ』とか、ときどき小さく叫ぶだけなの。あんまりよく聞こえないくらい小さく」

 

「レイナって誰」

 

なお麗菜はレナと読む。レイナとは誰なのかすぐに通じはしたけれど、突っ込みを入れるような気持ちで私は、そう尋ねてやった。

 

「霊よ」

 

「へえそう」

 

「いま言ったみたいに、話をして名乗ってもらったわけじゃあないから、私が勝手に呼んでいるだけなんだけどね。霊だから、レイコちゃんかレイナちゃんか、どっちがいいか考えたの」

 

「それで、自分の分身、みたいな意味を込めて?」

 

「そうそう」

 

どうもこの話し振りからすると、麗菜とレイナは仲が良さそうである。それは私だって、幽霊は怖いものだと決めて掛るような頭の堅い人間ではないつもりだが、しかし、人は霊とそう容易く付合えるものだろうか。

 

「一応確認だけど。嘘ついている?」

 

「いいえ」

 

これが麗菜の嘘ならば、こう真正面から斬込まれたら白状するのが正しい嘘のつき方である。麗菜は、それを理解しないほどに捻じれた根性の持ち主ではない。だから本当なのだろうと私も確信した。

 

それから二ヶ月も過ぎると、麗菜はもうあんまりぞくぞくしなくなったと言う。麗菜とレイナはたいへん仲が良さそうである。親友のことを話すように、レイナのことを私に喋る。つい私もレイナと親しくしているような気分になって来た。

 

昨日くらいから、何だか背筋がぞくぞくする。

 

 

****

 

この短い話はこれでおしまいですが、

しかし言語の鎖は連なる。

次回のスニペットは「根性」でお送りします。

 

※記事中の画像はウィキメディアコモンズより転載